学園(序)
「美味しかったです、ありがとうございます」

そろそろ、チャイムが鳴るので屋上から離れながら先輩を話している。

「そうか。そなたに美味しいと言われると、ワラワも自信がつくのう」

「先輩が全部作ってるんですか?」

「冷凍食品もあるが、玉子焼きなどはワラワが手がけた」

「へえ、料理まで出来るなんて、先輩はマスターアジアですか?」

「そんな大層なものではない。ワラワもまだ足らぬものが多い」

窓の外を見つめる眼がとても寂しそうに見えたのは気のせいなのだろうか。

「そうじゃ、ワラワの悪い部分とやらは、見つかったかえ?」

突然、思い出したように言ってくるが、こっちはすっかり忘れていた。

「やだなあ。料理まで出来てるんだから、さらになくなっちゃいましたよ」

「むー」

「でも、向こうから話しかけてこないっていうのなら、自分から話かけてみたらどうですか?」

先輩が交流を広げたいというのなら、やるべきだと思うけどな。

「ワラワは慢心しておった」

「はは、先輩がやる気になったらすぐに友達の輪が広がりますよ」

「そうかのう」

腕を組んで、一点を見つめたまま考えている。

しばらくして、足を止めてしまった。

俺も合わせて足を止めて、龍先輩の様子を伺った。

「よく考えれば、ワラワは今のままでも良いと思っておる」

「え?」

「無理に広げる必要はないと思っておるのじゃ」

「でも、色々な方面から話を聞けて、いいと思いますけど」

先輩にしては、閉鎖的であるな。

「ワラワは他人と接するのに仮面をつけとうない。これ以上、疲れるのは嫌じゃ」

「これ以上?」

「今のは戯言じゃ、気にするでない」

先輩が疲れた表情をしたのと同時に、チャイムが鳴った。
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