学園(序)
先輩、どうしたんだろう。

すぐに先輩は教室に戻ってしまったので、何も聞けなかった。

もし、いたとしても、何も聞くことは出来なかったとは思う。

「うーん」

今日一日でうんという言葉を一年分は言っているかもしれない。

悩んでも答えは出ないけど、考えずにはいられない。

龍先輩は仮面というワードを出した途端に元気がなくなった。

これ以上ということは今もまだ続いているということか?

一体、どこで仮面をつけ続けているのか?

言い方からすれば、仮面をつけて疲れ続けているわけだ。

龍先輩の知らない人たちではないはずだ。

他人と関わりを増やしたくないといっているからな。

じゃあ、身内か?

それなら、いつも傍にいるし、疲れることは間違いないんだけど。

でも、何で?

親だとか兄弟だとかありうるが、本当のところはよくわからない。

これ以上、変な憶測を立てるのはよそう。

自分勝手な思い込みで、先輩を追い詰めることはよくない。

先輩から話を聞くしかないだろう。

でも、自分では言ってくれないかもしれないな。

誰だって、言いたくないことだってあるしな。

俺みたいな一兵卒ごときが立ち入っていい話なのかどうかも気になるな。

吟ネエはあまり気にしていないみたいに見える。

俺の知らないところで、先輩とやり取りをしているのか。

それとも、何か知っているけど、龍先輩に気を使わせないように振舞っているのか。

考えるだけで状況が増えるな。

「葉桜ちゃん、君、授業、受ける気ある?アハン?」

また考え込んで、授業を聞いていないところを見破られたみたいだ。

「ア、リトル」

「パードゥン?」

英語中年女教師が差し棒を真っ二つに折った。

「何でもないっす」

口答えするのはよそう。

差し棒が粉々になるのも時間の問題だ。
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