学園(序)
中年教師に睨まれながらも終了した授業。

肩がこって仕方がない。

授業も終わったし、乾に礼を言わなければならない。

「乾」

「ん?」

今度はいるようだ。

「四限目の事なんだけど、ありがとうな」

眠そうな眼差しは話を聞いているのかわからない。

「ああ」

それだけを言うと、鞄の中から食堂で売っているホットドッグを取り出して食べ始めた。

絶対にどうでもいいと思ってるよね?

変わった奴だ。

こいつは誰かと会話したことがあるのだろうか。

クラスでは見たことがない。

去年も同じクラスだったんだけど、一人で何かを食べていた記憶がある。

その時にも、禍々しい大きな袋を持っていたな。

一体、何なのか気になるけど、触れたら怒られそうだ。

「ん?」

乾のほうを見ていたことに気付かれたのか、食べているのを中断してこちらを見つめ返してくる。

「それ、上手いか?」

「ん」

食べさしのほうをこちらに向けてくる。

食べてみろという合図なのだろうけど、いいのか。

遠慮せずにかじりついた。

いつもの上手くもなく、不味くもないホットドッグの味だった。

「うーん、このウィンナー、いつもどおりだな」

「そうだな」

ボソっと呟くと、また食べ始めた。

こいつ、無愛想で人を受けつけない印象があるんだけど、本当はいい奴なのかもしれないな。
< 37 / 101 >

この作品をシェア

pagetop