学園(序)
気に入らないといっても、ほとんどだけどな。

「いってえ!」

ガツンと鈍器で殴られたような激痛が頭に走る。

「説明の仕方がなってないアル。気に入らない事が起こるのが悪いアル」

一指し指を立てながら力説するが、納得がいかない。

「どう考えても、心が狭いんだよ」

「チッチッチ、色んないい男に体を許す女は空よりも高く、海よりも深い心を持っているアル」

「そりゃ尻が軽いだけだろうが!」

どうしてこんなにアグレッシブなんだ。

前向きすぎる姿勢は嫌いじゃないが、振り回されっぱなしになる。

「教室に戻ろうぜ」

「やる気しないアルな」

大股開きの胡坐は相変わらずで、そっぽを向いてダルそうにため息をついた。

「今まで散々やる気だしてやりまくってたんだから、少しくらいやる気は残ってるだろ」

「私のやる気を出させたかったら酒もってこいアル」

「あるわきゃねえ」

「吟、いつまでもダダをこねるでない」

頭痛がしてきたところで、入り口付近に小さい影が見えた。

「龍先輩」

「姫ちゃんと呼べといっておろう」

髪が腰よりも少し長い先輩が、腕を組んで眉を逆ハの字にしながらこちらを見ている。

この小さい先輩は龍 姫先輩だ。

吟ネエの友達であり、良心はこの人にあり、最大の抑止力になっている。

行き過ぎた行為を止められるのはこの人しかいない。

龍先輩も武道をやっており、吟ネエと同等に強いからな。
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