学園(序)
「今日の報告は終わりだ!来週は静かにいい子ちゃんしてろよ!葉桜!」

「へーい」

いい子かどうかは別にして、静かにはしてるんだけどな。

高井教師に迷惑をかけるわけにもいかないし、気をつけるか。

担任が出て行き、教室は水を得た魚状態で、ざわめきだした。

他の奴らは知り合い同士話し合っている。

1年頃と同じクラスのやつは乾ぐらいなので、他の奴と話し込むようなことはない。

「それじゃあな、乾」

知り合いみたいなもんだし、挨拶はしておく。

「ん」

鞄を持って黒袋を背負うと一言放ち、教室から出て行った。

それが挨拶がどうかはわからないけど、こいつなりのやり方なんだろう。

乾だからと納得していて、失礼だとかは思わなかった。

しかし、大きな物を軽々しく背負うなんて、凄い筋力してるな。

「早く先輩のところに行こう」

鞄を持って茶道部へと向う。

先輩に何もなければ、茶道部に顔を出しているはずである。

茶道部は本館とは別にある旧館に位置している。

旧館にはお化けが出るだとか噂があるけど信じていない。

そもそも、夜の学校に踏み入る事がないので、幽霊を見ること自体ない。

本館から数分も経たない内に旧館に辿り着く。

本館と違って静かである。

人はいるはずなのに音があまり聞こえないのは不気味だ。

皆がそれだけ集中しているか、外に漏れない声で話しているかってことだ。

茶道部は2階なので進んでいくと、部室の前で先輩の姿を見かけた。

一人ではない。

もう一人は男らしく、見たことがない。

緑の学ランに緑帽子を深く被っており、竹刀が入っているような袋を持っている。

この学校の生徒はブレザーで統一されているので、学ランがいるのはおかしな話である。

一体、誰なんだろうか。
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