学園(序)
学ランは俺に気付いて先輩に一礼すると去っていった。

「そなたか」

「先輩、遊びに来ました」

「部活は遊びではないんじゃがなあ。まあ、良かろう」

昼間とは打って変わって、いつもの顔に戻っていた。

部員でもないのだが、部室に上げてもらう。

親しい知り合いということで許される。

龍先輩がいなければ、入ることも許されなかったんだろうけどな。

顧問はあまりこないので、問題は少ない。

茶道部の部室は他の場所と違って畳で出来ており、唯一靴を脱がなければならない。

畳の懐かしいニオイで田舎に帰郷したような気分になってしまった。

結構来てるので、遠慮なく腰を落ち着けた。

「お茶じゃ」

茶道部らしいといえばらしいが本場のものではなく、どこにでも売ってそうな緑茶が丸い陶器に入って出される。

一口飲むと、不思議と心が落ち着いていく。

「やっぱ、先輩の入れるお茶が一番上手いっす」

先輩の入れるお茶はいつも美味い。

気持ちの違いって大きいんだなと毎回ながらに思う。

吟ネエなら、酒を出してきそうだけどな。

「相変わらずな社交辞令じゃのう」

「正直ね、このお茶で英語教師に怒られたストレスなんてマンマミーアですよ」

「そなた、マンマミーアがどこの国で使われておって、何の意味かを解って使っておるのか?」

「フランス辺りで素晴らしいとか、そんな感じじゃないですかね?」

「イタリアで使われており、意味は全くの逆じゃ。不幸な出来事が起こった時に使う言葉ぞえ」

「先輩って、物知りですよね」

「全く、そなたはもっと物を知らなければならぬ」

先輩も座布団を敷いて、その上に腰を下ろした。
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