学園(序)
「じゃあ、正しくは何て言うんですか?」

「ファンタスティコじゃ」

そういって、マイ陶器で紅茶を飲む。

先輩は緑茶よりも紅茶が好きみたいだ。

茶の道と書いて茶道部なので、紅茶でも問題はないはず。

「先輩、他の部員の人たちは今日は来てないんですか?」

「皆、用事があるらしい」

「部活に熱心な笹原先輩もですか?」

「うむ、急用が出来たと言っておったがのう」

笹原先輩はとても元気で、少し五月蝿いほどである。

毎日部活に顔を出していて、皆勤賞でももらえるんじゃないかと思ったくらいだ。

龍先輩が居ない時は、この人とお喋りをしてることが多い。

「皆が一斉に用事なんて、不思議なこともあるもんですね」

「稀とはいえ、奇跡に近い事じゃ。ところで」

「どうしたんっすか?」

「吟はどうしたのじゃ?」

「朝は眠いからといって布団から出てこなかったんですよね」

「あやつ、卒業がかかっておるのに何をやっておる」

先輩も俺と同じ考えのようだ。

「吟ネエ、出席日数とかやばいんですよね?」

「まだ3年が始まったばかりじゃからどうともいえぬが、このままいけば不味いのう」

よく一度も留年しなかったですね。

教師の弱みでも握って、脅迫でもしたのか。

「最初からさぼりがちでは幸先不安じゃな、少々喝を入れねばならぬ」

「聞きますかね?」

「そなた、吟が心配ではないのか?」

「それは、まあ」

「じゃあ、その弱腰を叩き直すべきじゃな」

龍先輩だから聞くっていうのもあると思うんだけどな。
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