学園(序)
「眺めるだけではそなたの気持ちは伝わらぬ」

「言ったとしても、殴られてオチだと思うんですけど」

「殴られることが怖いのなら、そなたは吟に何も認められぬことになる」

ツンであるなら、別にどうでもいい事だもんと言ってしまいそうだが、そうはいかないな。

「誰もが呆れる奴ではあるが、そなたは諦めずに近くにおる」

陶器をお盆の上に置いて、窓の外を見る。

「粘り強さはそなたの強みじゃ。一度殴られたからといって、粘りを捨てるような奴ではなかろう?」

一度で済めばいいんだけどな。

「そなたが吟のことを好いておるのは解っておる」

好いているかどうかといえば、好意を寄せているのは確かだ。

でも、何かを投げ出してまでって言うほどかどうかといえば、確証はない。

それを言うならば、龍先輩にだって好意を抱いている。

何だかわからないという答えもあった。

でも、龍先輩との会話をするためにここに来ているわけだしな。

素直な気持ちに顔を背けるわけにもいかない。

自分との対話の末、そんな結論に導いたわけだ。

さっき、眺めるだけじゃ何も伝わらないって言ってたよな?

「でも、吟ネエに負けないぐらい龍先輩もいいと思いますよ」

「そなた、何を戯けたことを」

怪訝そうな顔をしてこちらを見ているが、決して嘘を言ったわけじゃない。

「浮ついた気持ちでは、吟に誠意は伝わらぬぞえ」

「浮ついてるのは否定できませんけど、龍先輩と一緒にいて楽しいというのは本心ですよ」

「それは友人としての気持ちじゃ。もっと、自分の気持ちを見つめなおすが良い」

「俺は自分の気持ちの正直に生きてるだけです。さっき、龍先輩も言いましたよ。だから、俺は実行したまでです」

困惑さしているのは悪いが、前言撤回はない。

粘り強さが強みだといったのも、龍先輩だ。
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