学園(序)
「むー」

慣れていないのか、いくてが阻まれた感がある。

男とあまり話してはいないと言ってたしな。

「急にすいません。先輩にも好きな人とかいますよね」

「いや、おらぬ」

「でも、仲良さそうに話していたじゃないですか」

緑の帽子、あいつとはちゃんと話していた様子があった。

「ん?乾のことを言っておるのか?」

「乾っていうんですか」

乾、ちょっと待て。

俺のクラスにも乾っていう奴はいるぞ。

「あれは用心棒のようなものじゃ」

「よ、用心棒?」

何て物騒な奴が近くにいるんだ。

龍先輩が誰かに狙われているというのか。

「うむ、ワラワはいらぬと言っておるのじゃがな。父君が付かせたようじゃ」

「龍先輩って、危ない橋でも渡っているんですか?」

「ワラワは健全な白じゃ。父君のやっていることはどうか知らぬがな」

先輩の家は古くから続いている大富豪だ。

金持ちにあるイメージは真っ白というわけにはいかない。

必要悪という言葉もあるように、黒いことだって起こる。

内容はよく知らないけど、龍先輩の親が乾という用心棒をつけるということは、誰かから恨みを買っているわけだ。

「あいつ、明らかにこの学校の奴じゃないですよね?」

「学生でもあらぬがな」

「え?」

「乾光蔵、25歳、無明一刀流を継承した男じゃ」

流派とか無縁の俺だから、名前だけ聞かされても強いかどうかわからない。

「っつうか、高井教師と近い年かよ」

高井教師は24だったような気がする。
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