学園(序)
「わかりましたよ。聞くかどうかわかりませんが、言ってみます」

「わかっておらぬではないか」

「ええ?」

「そなたの強みは粘り強さじゃと言っておろう」

「うざがられてもやるんですか?」

「当たり前じゃ。印象付けは大切なのじゃ」

吟ネエの性格だから、きっと失敗しそうだけどな。

でも、龍先輩の期待を裏切るわけにもいかない。

「わかりました。聞くまで言いますよ」

「うむ、それでよい。何事も前に進む事は大事じゃ」

そういえば、昼休みのことを聞くことを忘れていたな。

「あの」

「む、下校時刻じゃな」

俺が下校時刻だということを告げようとしたのと勘違いしたのか。

龍先輩の一言で周りを見る。

辺りは真っ暗になっていた。

先輩はきっちりしている方なので、従っておいたほうがいい。

明日もあるんだし、ウダウダ言う問題でもないな。

先輩が陶器を片付けるのを待って、タイミングを見計らう。

「じゃあ、校門まで一緒に行きましょう」

俺は自分の鞄と先輩の鞄を持った。

「良い。自分の事ぐらい自分でやる」

鞄を奪おうとするけれど、俺は高い位置に持ち上げる。

「昼飯といい、お茶といい、色々話をしてくれたことといい、感謝してるんですよ。これぐらいはさせてください」

「そのように甘えられぬ」

「先輩はストイックすぎますって」

「いーやーじゃー」

小動物のようにピョンピョン跳ねるが、次の瞬間に異様なジャンプ力を見せて鞄を奪う。

しかし、体勢が整わず、俺の上にかぶさるように落ちてきた。
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