学園(序)
「いてえ」

「むー」

俺の上にかぶさる小さい体。

髪が辺りに乱れるように広がって、くらげを連想させた。

それよりも、こんなに近くにいたのは初めてだ。

先輩は女性特有の甘いニオイをさせている。

体は小さくても、やはり女なのだと認識する。

「すまぬ、ワラワが余計なことをしたばかりに」

「先輩こそ無事ですか?どこか痛むところとかないですか?」

先輩の腕や背中などを触って確かめる。

「ワラワに被害はない。そなたがクッション代わりになったからのう」

「本当にすいません。今度から気をつけます」

「それは良いのじゃが、どさくさに紛れて、ワラワの尻に手を置いておるのは何故じゃ?」

「これは失礼」

自分では意識してなかったのだが、本能がいけないお手てをそこへ向わせたのか。

咄嗟に手をどけて、先輩を立たせる。

「抜け目ない奴じゃのう」

「すいません。勢い余ってというか、先輩の可愛らしさに骨抜きにされたというか」

「むー、恥ずかしげもなく、大胆なことをいう奴じゃ」

細い目で見られならも顔を紅くさせる姿に、萌え萌えですわ。

「いや、あながち本当のことなんですけども」

「まあ、良い。尻を触った償いとして、鞄を持つが良かろう」

先輩が俺に鞄を押し付けて、先に教室を出る。

あー、頼られるって素敵な世界だ。

犬みたいだけど、それもまた快感だよお。

「何をしておる。この部屋に泊まるつもりかえ?」

泊まるなら先輩と二人がいいな。

でも、あまり言い過ぎると朝みたいな惨事が起きるので、黙ったまま先輩の後に続いた。
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