学園(序)
梟の鳴き声がどのようなものかは詳しくは知らない。

でも、ホーホーと鳴く声は梟だと昔から相場が決まっている。

それは常に夜だということも、だ。

校庭の横にある道を歩いていくと、校門に差し掛かった。

校門には誰かがもたれかかっている。

「乾」

先輩が呟くと、乾はもたれかかるのをやめて直立不動の状態になる。

その姿は闇と溶け込んだ者のように、危険な臭いをさせている。

「依頼主が心配する」

「わかっておる」

短いやり取りだけで、二人はやることを決めたようだ。

「すまぬ、ここでお別れじゃ」

「え?」

「お前は帰れ。邪魔だ」

静かなドスの聞いた声は殺意すらも感じられる。

本職には逆らわないほうがいいだろう。

本当に邪魔だし、乾に任せたほうが安全だ。

それに、明日もあるしな。

「じゃあ、先輩、明日の9時に校門で」

「うむ、笹原にも伝えておこう。そなたは吟に言う事を忘れるでないぞ」

「耳にタコが出来るぐらい聞かせてやりますよ」

「その意気じゃ」

先輩は俺の傍から離れて乾と並んで闇へと消えていった。

「先輩の奥底には触れられなかったな」

後は一人寂しく家路につくだけになった。

しかし、そうは問屋は卸さないみたいで、吟ネエがトウモロコシを食べながら私服姿で歩いているのが見えた。

「吟ネエ!」

自分の中にある思いが大きいかったのか、俺の足の速さは駿馬の如く、すぐに追いついた。
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