学園(序)
「酒~、私の酒はどこアルか~」

「アル中の脳みそを正すには勉学が一番じゃ」

吟ネエの襟を持ちながら引きずっていく後を俺が追いかけていく。

細い腕で吟の体重を軽々と運んでいくところに、龍先輩のポテンシャルの高さが伺える。

「龍先輩も大変っすね」

「そなた、ワラワのことを絶対に姫ちゃんと呼ばぬな」

「尊敬出来る人ですからね。ちゃん付けなんか恐れ多くて呼べないっすよ」

「むう、そなたの言い分は嬉しいが、姫ちゃんと呼ばれんと気が済まぬな」

「はは、俺が先輩と同い年なら遠慮なく呼んでたんですけどね」

背は小さくても、とても大きい存在だ。

龍先輩は茶道部所属で、放課後は茶室である部室で過ごしている。

俺は吟ネエを通じて、龍先輩と知り合った。

情けない話だが、何度か不良から助けてもらったことがある。

不良に絡まれたのは吟ネエの知り合いだかららしい。

色々敵を作ってれば、身内を狙ってくるのも解らないでもない。

偶然通りかかった、龍先輩が軽く捻って敵を退散させた。

俺の中ではとてもいい人で、好感を持てる人である。

だから、龍先輩を慕っているわけで、たまに部室へと足を運ぶこともある。

打って変わって吟ネエといえば、部活はオカルト研究会だったか。

幽霊などまったく信じなさそうな方が、意外性ありすぎだと思うんだがな。

部員もほとんど幽霊部員で構成されていると思うんだがな。

地味にサバトやら、黒魔術やら、邪悪な事が似合いそうだから怖いぜ。

でも、酒と性行為以外、興味なさそうなんだよな。

ま、何はともあれ一度も部室へ行ったことがなさそうだ。
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