学園(序)
「しつこいアルな。今日は何かあった日アルか?」

「学校があった日だっつってるだろ!あのな、俺だって吟ネエに楽しい時間を満喫して欲しいよ。でも、時には苦しいこともなくちゃ成長しないよ!」

「さっきから五月蝿いアルよ」

「五月蝿くても、ちゃんと学校に行くまでは言う!」

「お前に心配されなくとも、私は好きなときに学校に行って成長してるアル」

「それじゃ駄目なんだよ!吟ネエは自分の事を軽く考えてる。楽な誘惑に負けると何も出来なくなるんだ!何も出来なくなるってわかるか?楽なことすら出来なくなるんだよ!」

「大丈夫ある。そこらへんの男見つけて、お嫁さんにでもなるアルよ」

「ちゃんと話を聞けよ!」

「春のトウモロコシもうまいアル」

「く」

願いは叶わないのか。

でも、諦めることが出来ない。

吟ネエのためでもあるし、自分のためでもある。

龍先輩だけに任せるわけにはいかない。

ここでくじけたら、他の誰が吟ネエを叱るんだよ。

「お前、私のことがそんなに心配アルか?」

「自らの道を閉ざそうとすることを見てられない!吟ネエの人生に少しでも幅を広げることが出来るのなら、俺は全力を尽くす!」

学校だけが全てじゃない。

でも、行けば幅は広がるはずなんだ。

偽善かもしれない、一方的な押し付けかもしれない。

誰だって言われれば嫌かもしれない。

でも、今言わずして、いつ言うんだ。

「暑苦しい奴アル。じゃあ、一つ賭けをするアル」

吟ネエが面倒くさそうな顔つきになりながらも、トウモロコシを袋の中に投げ捨てた。

「何?」

「お前が私の拳を五発受けて立ってられたら、いう事を聞いてやるアル」

五本指を立てて、条件を提示してくる。

「五発か」

「私は肉体も精神力も強い奴が好きアル。そんな奴なら少しだけ願い事を聞いてもいいと思うアル」

口だけでは何もままならないということか。

でも、これは千載一遇のチャンスではないだろうか?
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