学園(序)
「本当にそれで吟ネエは学校に行ってくれるんだな?」

「お前が立っていられればの話アル」

何で吟ネエのためにこうまで熱くなってるんだろう。

今解ることといえば、絶対に倒れてはならないということ。

誰かのための自己犠牲。

大体は自己満足でしかないのだが、それでもいい。

俺にとっては大きな利益となる。

「お前が殴る場所を決めていいアルよ」

「太っ腹だな」

「私はケツもでかいアルよ」

「興味100倍だな。じゃあ、最初は右肩で頼むぜ」

右肩に力を入れると、吟ネエは開いた五本指を小指から閉じていく。

「そんなに力むなアル」

「いや、油断はしない。いつやってくるかわからないからな」

「あ、龍アル」

吟ネエが後方を見ながら、帰ったはずの龍先輩の名を呼ぶ。

咄嗟の事だったので反応してしまい、そちらを見てしまう。

さっき言ってたばっかりなのに、油断大敵であった。

「く」

力を入れ直そうとしたが遅かった。

筋肉の中にめり込むような拳が肩に衝撃を与える。

「い、いってええええ!」

もう一度殴られたら、使い物にならないんじゃないか。

それほど痛くて、嫌になる。

「そなたら、何をしておる」

後ろには本当に龍先輩がいるが、見てる暇はない。

「私は嘘付かないアルよ」

嘘とか嘘ではないとか、どうでもいい話だった。

油断をついてくるとは、本当に考えを変えるのは嫌なんだろう。

「吟、丞を一方的に殴るとは、どういう了見か?」

「こいつがいいと言ったからやっているだけアル。私はいつでも止めていいアルよ」

「先輩、理由はちゃんとあるんです。後で説明します。今はさっさと終わらせますよ」

何で先輩が戻ってきたのかは解らないけど、こっちはこっちの行事を終わらせるだけだ。
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