学園(序)
「もう小細工はしないアルよ」

「二回も小細工をされて、どう信じろっていうんだ」

「確実に沈めるアルからな」

獲物を狩る目は、さらに鋭くなっている。

二発で落とせなかったからだろうか。

「覚悟をするアル」

「最初から、そのつもりだ」

吟ネエがはあと息を拳にふきかける。

そして、半身にして脇を閉め、片手を前に突き出し、低く大きな構えを取る。

中段正拳突きの構えだ。

後、三発あるが耐えられるか。

「はあああああ!」

俺は腹筋に力を込めると、吟ネエが勢いをつけて拳を突き出した。

肩の数倍は威力があったか。

体が数ミリ浮くのと同時に、胃の中から逆流してくる昼飯。

「う、お、ああ」

吐きそうになるのを我慢できない程の痛み。

気を失いそうになる。

地上に足がつくと、足元がふらつき膝が落ちそうになる。

「丞!」

龍先輩の声が聞こえてくる。

おいおい、俺様よ、何悲痛な声を出させちゃってるのさ。

「おええええ!」

吐いてリフレシュ!とはいかない。

だが、少しだけ身が軽くなったような気がした。

気がしただけだが、今はそれで十分だ。

両足を大きく広げて、体勢を整えた。

「吟ねええ、後、二発だぜえ」

駄目だ、視界が定まらない。

気を緩ませれば、意識の底に落ちる。
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