学園(序)
「吟ネエ、もう俺は何も言わないよ。今までどおり自由にしていい」

無言でトウモロコシを食べ続ける。

聞いているのか聞いていないのかわからない。

「吟ネエはやっぱり縛られるのが嫌だよな。余計なこと言ってゴメン」

「つまらんアル」

「貴様、今、なんと申した」

まずいな。

何で先輩の逆鱗に触れるような事ばかり言うんだ。

「お前に何も言われなくなるとつまらんアル」

「は?」

この人は何を言っているのだろう。

「お前は多少なりとも根性あるアル。それに、お前の説得は多少なりとも面白かったアル」

「はあ?」

意味がわからない。

吟ネエの心理はどうなっているんだ。

「ちゃんと説明してくれなきゃわかんねえよ」

「三発目で確実に落とすつもりだったアル。でも、今まで何もやってこなかった奴に耐えられるとは思わなかったアルな」

あの本気の突きで今も腹の部分に痛みが走っている。

もしかして、少しは認めてくれたってわけか。

「お前と毎日学校に登校をしてやってもいいアル」

「何故、そんなに上から目線なのじゃ?」

「それは私のほうが有利だからアル」

賭けは負けたようなもんだし、それがいつもの吟ネエだ。

「吟ネエ、ありがとう」

「夜中のトウモロコシが美味いアル」

最後も聞いてるかどうかわからなかったけど、これで吟ネエは学校に行ってくれるみたいだ。

「それより、先輩、何で戻ってきたんですか?」

「吟の姿が見えたのでな。少し言っておこうかと思ってのう」

先輩からも言ってくれようとしたのか。

「行けばそなたが吟に殴られてるではないか。さすがに不可解すぎて驚いたぞえ」
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