学園(序)
俺は経緯を龍先輩に説明した。

「暴力で解決しようなどとは、正気の沙汰ではあらぬな」

「お互いに解りやすくて、シンプルでいいですよ」

「そなたらには口があるではないか。何故、話し合いで結果を出さぬ?」

「吟ネエは話すより行動で示したほうがいいんですよ。ま、一般的に言えばやり方は間違っているかもしれないですけど、俺らにしたらそれこそが正しいルールなんです」

「この大ウツケが!そなたの身体あってのものであろう!」

先輩の声が耳に響く。

「先輩、有終の美ですよ」

「このような事、立派といえん!」

「はは、先輩、心配させてすいません」

どんどん肩身が狭くなっていく感じがする。

「ワラワが余計なことを言ったばかりに、このような無茶な真似をさせてしもうた」

大きな瞳に少しだけ涙が溜まってきている。

「結果オーライですけえ。だからね、笑ってくださいよ。笑ってくれないと吐血しますよ?いいんですか?」

「洒落になってないことを言うでない」

「余裕があって問題がないってことですよ」

俺はポケットからハンカチを取り出して先輩に渡す。

「ほら、目元のプライスレスを拭いてください」

「トウモロコシを食って元気出せアル」

いつの間にか横にいた吟ネエが食い刺しのトウモロコシを差し出す。

龍先輩は俺のハンカチで涙を拭いた後、吟ネエからトウモロコシを奪い取って食べる。

「美味じゃ」

「俺もうまいもん見れたんで今日は良しとしましょう」

一つ忘れてることがあった。

「そういや、付き人はどうしたんですか?」

「さっきからそこにおる」

「え?」

目を凝らしてよくみると、無表情のまま立っていた。

俺達のやり取りには興味がないようだ。

普段も不気味なんだから、何か言えよ。
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