学園(序)
「あははは!丞君、汗くさーい!」

笹原 晶(ささはら あきら)は軽くパーマをかけたセミロングをしている。

今日の服装は黒ブラウスにデニムのスカートで、サンダルという涼しげな感じである。

どうでもいい情報になるが、サンダルなのはこの人だけで、他の二人はスニーカーなのだ。

後、前にも言ったけど、笹原先輩は茶道部に入部していて実は副部長だ。

ゲラな笹原先輩は空気を読んでくれない。

「先輩は、吟ネエより元気ですよね」

ホント、年がら年中笑っているイメージがあるんだ。

「笑うって凄いんだよ!」

「何がですか?」

「ほらー!あれだあよあれ!あはははは!」

笑い岳でも食ったのか、説明もちゃんと出来ないみたいだ。

でも、この人を見てると、悩み事が馬鹿らしく思えてくる。

「晶、笑うのは良い、じゃが、少し抑えねばならぬ」

「えー!部長も笑いましょうよ!」

「吟、そなた、早々に丞に迷惑をかけておるな」

いつまでも構ってられないと、標的を吟ネエに変えたようだ。

「私は睡眠時間を削ってまで早起きしたアル」

無理に削る必要もないし、写真集を見ていたことは言わないらしい。

でも、早起きしたっていうのは本当のことなんだよな。

あれ?

先に行くなら一人でも行けたんだ。

ひょっとして、一緒に行くために待っててくれたのか?

都合よく考えすぎかな。

本当は眠くて時間を見過ごしていたっていうオチなのかもしれないな。

吟ネエだから、安易に考えると痛い目に遭うしな。

それよりも気になるのは、仏頂面で立っている男。

乾光蔵のことだ。

今日も昨日と同じ格好で、持ち物も同じであった。

この人、私服を持ってないのかね。
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