学園(序)
似てないとはいえ、龍先輩の顔で言われると胸に刺さるね。

しかも、吟ネエの本心を言っているのかどうかも気になる。

冗談とは思うけどな。

「余計なことをするでない!前に進まぬではないか!」

「龍は相手に身を委ねるくらいの心を持ったほうが良いアル」

「そなたにだけは預ける気が起きぬ」

「おい」

俺達のやり取りを見かねたのか、ここに来て乾が初めて言葉を発した。

「お前ら、まとまりがないな」

一番言われたくない奴に言われてしまった。

でも、反省すべき点は多いにあるのは確かな話である。

言葉は少ないのに、何て核心をついてくるんだ。

そっぽを向いているばかりではないようだ。

龍先輩も我に戻ったらしく、恥ずかしげに俯いていた。

「商店街に向って歩きましょう」

商店街なら、何か見つかるかもしれないと思っていた。

「そっちにイカランチはないアル!」

吟ネエの昼食はイカランチと絶対的に決まっているようだ。

ワガママを言い出したら聞かないんだよな。

俺の閃きは吟ネエの食事によって潰されてしまった。

というか、最初からイカランチのある隣町に向えばよかったんじゃないか?

「じゃあ、駅に向おう。龍先輩、笹原先輩、それでいいですか?」

「ここから離れるのなら構わぬ」

「私もイカランチたべたーい!」

乾には聞く必要がないだろう。

龍先輩の行く先には金魚の糞みたいに付いてくるんだろうしな。

俺達はゆっくりながらも歩き出し、駅へと向かった。

隊列としては、俺&龍先輩、吟ネエ&笹原先輩、一番後ろに乾だ。

笹原先輩は笑いながらも吟ネエに話しかけているが、本人はほとんど聞いていないだろう。

乾は周囲を鋭い目つきで威嚇しながら歩いている。
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