学園(序)
歩きながらも、先輩の私生活を聞くことにした。

「先輩は普段の休日とか何やってるんですか?」

きっと、テラスで優雅な一日を過ごしているに違いない。

「部屋の掃除、洗濯物の片付け、読書などじゃ」

「何て庶民派!」

主婦のような生活を送ってるじゃないか。

「そなた、ワラワを何じゃと思うておる?」

胸が苦しくなるようなじと目で見られている。

「先輩の家って、メイドさんがやってくれてそうなイメージがあるんですけどね」

「自分の事は自分でやらねばならぬ」

「尊敬します」

「止さぬか」

じと目から一転、恥ずかしげに否定するところに胸が切なくなっちゃうね。

ショックの連続で、心臓麻痺でも起こしたらどうするんだ。

「メイドさんはいないんですか?」

「おる」

「フリルなんですかね?」

「やけにメイドに拘るのう、そなた、メイドフェチとかいう奴か?」

「滅相もない」

先輩達限定の制服フェチですとは言えない。

自分では興奮しているつもりはなかったのだが、先輩からはそう見えていたらしい。

でも、珍しいものならば、詳しく聞きたくなるだろう。

「制服としてメイド服は着ておる」

メイド喫茶にいるような人を想像してもいいのかな。

「結構、大変そうな仕事ですよね?」

「料理、掃除、ガーデニング、運転、車のメンテナンス、セキュリティシステム、知識や会話スキルも必要になる。ワラワには出来ぬな」

「メイド服を着るだけじゃ駄目なんですね」

「そなた、メイドに興味があるのなら、一度やってみるかえ?」

「滅相もない」

一日も経たない内に過労死しているだろう。
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