学園(序)
廊下を歩いていると、見覚えのある背中を見つけた。

中庭で座り込んで何をしているのだろう。

俺は校舎から外に出て、日の当たる中庭に向った。

近づくに連れて、確実になっていく正体。

それは、吟ネエだった。

背中から覗き込むと、向こう側には黒猫がいる。

ミルクを与えているところ、餌付けしているようだ。

吟ネエって猫が好きだったのか。

意外性を垣間見たような気がする。

「吟ネエ、俺、誤解してたよ」

隣に座り込んで顔を覗き込むと、頬を吊り上げながら、何かを企んでいる顔だった。

いや、答えを聞くまではわからない。

家で飼えるかどうか、親の説得の仕方を考えてたに違いない。

「何が誤解アルか?」

吟ネエは俺を見ずに答える。

「吟ネエが猫好きだったんだなと思ってさ」

「可愛いアルな」

やっぱり、ビッチだから心が汚いわけじゃないんだ。

「うん」

「可愛いほど、神様の供物に打って付けアル」

「えーっと」

それって生贄ですか?

オカルト研究会に使うんですか?

動物愛護協会に訴えられそうだな。
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