学園(序)
「可愛がるなら、もっと優しい事してあげようよ」

「生きている内には山あり谷ありアルよ」

「吟ネエは、研究のためにモルモットにするつもりか?」

言い方は悪いが、扱いは同じようなものだ。

「意味のある死に方が出来れば、本望アル」

「コラコラ、人間のエゴで殺そうとするな」

この人、本気だ。

でも、猫には吟ネエの考えが解るわけもない。

ミルクを飲み終わった猫は吟の足に体をすりつけている。

懐いているのか、痒いからだをこすり付けているのか。

「ほら、猫は吟ネエのことが気に入ってるみたいだ」

「駄目アル。私は見せかけの可愛さには惑わされないアル」

「ええー」

このままでは黒猫が断末魔を上げてしまいそうだ。

そもそも、黒猫を生贄にしようなんていうのも、思いつきに違いない。

ホント、気まぐれだもんな。

「にゃあ」

ときめきいっぱいハートフルデイズ。

君の笑顔がチェックメイト。

黒猫は不吉だというが、君は天使のような子だ。

これは見過ごせないぞ。

「吟ネエ、お酒飲みたくない?」

ピクっと体を反応させる。

何とかして、黒猫から気をそらせないと狂気の世界が広がりそうだ。

「あー、最近、吟ネエが好きそうな酒を見つけたんだけどなあ」

これで釣れなかったら、龍先輩を呼ぶしかなくなるぞ。
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