ラブ・スーパーノヴァ
薫が黙ってじっと見つめる。
その間に倫は冷たいお茶を用意してテーブルに置いた。

「・・・これはドイツ語じゃない。ラテン語だ。祖父はラテン語が好きだったから、よくラテン語でメモしてた。でも、ここに書いてあるのはメモというより日記みたいだね」
「読めるの?」

薫は首を横に振った。

「少し教えてもらった時もあったけど、本当に基本だけしか知らない。日付が書いてあるのがわかるくらいだ。一番最初が・・・4月11日」
「何年の?」
「月日しか書いてない」

そう・・・と倫は小さく答えた。日記であれば、幸子と倫についてのことが書いてあることも考えられる。

「俺、訳してこようか?」

薫が本を閉じて倫に聞いた。
倫はどんなことが書かれているのかを薫が知っていいものか悩んだが、ラテン語など自分にはさっぱりわからないし、大学にも知っているものはいないだろう。

それに、薫はもう事実を知ってしまっているのだ。これ以上、何を知られても変わりがないと思えた。

「じゃあ・・・お願いしていい?」
「もちろん」
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