ラブ・スーパーノヴァ
「ごめんね、食事中だったのに。お友達にも悪いことしちゃったな。」

久しぶりに見た薫は、よりいっそう艶やかに見えた。今日は制服を着ていない。

「ううん・・・大丈夫。」

倫は顔を見ることができなかった。妙に照れてしまうのもあるが、会いたかった気持ちが顔に出て、悟られてしまうのがいやだった。

「白衣、似合うね。何かの実験?」
「あぁ・・・うん。東京湾の水質の調査してて・・・。」

薫はそう、と言ったきり黙ってしまった。
倫は話題を見つけなきゃともじもじした。

「あ、本、返そうと思ってて時間たっちゃってごめん。今とってくる。」
倫がそう言って研究室に向かおうとすると薫が倫の手をとった。

「いいよ。また今度で。」
「でも・・・」
「ずっと持ってていい。そしたら本を口実に倫ちゃんに会えるだろ。」

薫は優しく笑った。

倫は照れてそっけなく言った。
「べ、別に本なんかなくても、会うわよ。いつだって。」

薫は倫の手の甲を撫でながらいじわるく微笑んだ。

「うそつき。会いにこなかったくせに。」
「い、忙しかったんだもん。本当よ。それに、本返そうにも、あなたの連絡先知らないし・・・」
「わかったよ。・・・じゃあ、’会いたかった’って言ったら信じる。」

倫は思いきり照れて顔を赤くした。

「何言ってんのよ!い、言わないわよ、そんなこと。」
倫はまわりで誰か聞いてないかとあたりを見回した。

「俺は会いたかったよ。」

いきなり薫が真剣な表情になって言った。

「会いたかった」

心臓をぎゅうっとつかまれた気がした。

「そんなの・・・知らないわよ・・・」

倫はなんて答えていいのかわからず、そう言うしかなかった。
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