恋はピンポンダッシュ!
「でも、よくその子…なのか、本当の所分からないけれど、よく夏季の家が分かったわね。」
「あっ!」
夏季は、圭織に指摘されるまで、普通、誰もが真っ先に思うその素朴な疑問に気付かなかった。
「そう言えばそうよ!何であの子、私の家を知ってたんだろう。」
「あっ、夏季。そろそろ授業が始まるから、私、席に戻っておくね。」
「えっ、ああ…」
そう言うと夏季は、机に肘を突いて、両手でほほをささえて目を閉じて考え込んだ。



―「…それ~っ、逃げろぉ~っ!鬼ばばあが追いかけて来るぞ!」
「こらあっ!待ちなさい!今日こそ捕まえて、このフライパンでお仕置してやる!」
「へへんだ!捕まるかよ…って、おい、お前、ぐずぐずすんなよ、捕まっちまうぞ、おいって、聞いてんのかよ…」―



「…うん?…ああ夢か。考え事をしている間に居眠りしちゃってたんだ。でも、嫌な事が続くから、見る夢まであの頃の夢を…」
夏季がそうつぶやいたその時、夏季は、初めて今現在の教室内の雰囲気が、いつもと違う事に気付いた。
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