恋はピンポンダッシュ!
それから二人は、テーブルに横隣りになって座った。
「そう…その子、そんな事言ったんだ。」
そう言うと、夏季の母は、しばらく黙ったまま、その文章を眺めていたが、ふと、夏季に切なげなまなざしをしながらこう言った。
「…もし、あの時の子が、本当に転校生の海斗君であるとしたら、ママ、あなたが思った感想とは全く逆の意味に思えるんだけれど、この文章。」
「ど、どういう事!?」
予想もしないその言葉に、夏季は驚いた。
「ママ、どういう事なの?」
「あなたがピンポンダッシュされてた時の事だけれども、その子、一緒にピンポンダッシュしてた他の子達と、何か違いというか、妙な違和感を感じなかった?」
「妙な違和感?」
夏季は、あの時の情景を思い浮かべてみる。何度も続けられたあのピンポンダッシュの日々を。そして、夏季は、ある一つの事柄に気がついた。
「…そう言えば、あの子だけ、他の子と違って、走る順序が必ず一番最後になってた様な…そして毎回、他の子から早く走る様にせかされていた…!?それって…」
夏季は、たった今、ある真実をつかみかけていた。
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