恋はピンポンダッシュ!
「もしかして、あの子、常に一番後ろを走ってたから勝手に、あの悪ガキ達の中で一番走るのが遅いと思い込んでいたけれど、本当は、本気を出せばもっと速く走る事が出来てたんじゃ…じゃあ、毎回わざと遅く走ってたって事?なぜ?へたをすれば、私に捕まえられて、フライパンでお仕置されてたのよ!?」
「もし、その子の目的が、他の子と違って、逃げる事じゃなかったとしたら?」
「わ、解んない!ピンポンダッシュはいたずらよ。捕まらずに逃げてなんぼ。本来なら、その逃げる姿さえ見られてはならないものよ!」
「夏季は、自分の恋をピンポンダッシュされる事、つまり一方通行の恋をそれに例えていたけれど、案外それは、ピンポンダッシュ…する側にも言える事なのかもね。」
夏季の母は、ふうっと溜め息をつきながら続ける。
「…恋に臆病で、秘めた想いを面として伝える事も出来ず、ただ、その想いを小さな指先にのせてインターホンを押す。捕まりたくはないけれど、でも、本当は逃げ出したくはない。遠くに離れないといけない事をしているけれど、本当は、すぐ側にいたい…って、少し想像が過ぎたかしら?」
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