恋はピンポンダッシュ!
「…」
海斗は、黙ったままだった。しかし、夏季はそんな海斗にさらに語りかけた。
「過ぎ去った過去は変える事は出来ない…だからみんな、より良い未来を築こうと頑張るんだ。それが人なんだって、いつかの全体朝礼で、校長先生が言ってた。…でもね、あなたと再び出会って、わずかニ、三日の間でだけどそんな事ばかりじゃないんじゃないのかなと思う様になったの。」
「…どういう事?」
「偉そうかもしれないけれど、唯一、愛だけが、過去をも未来をも変える事の出来る、人が持つ神秘的な力なんじゃないかなって…本当に、ピンポンダッシュが嫌だった。嫌な過去ばかりだと思っていた。でも、そんな過去の中にも、一つだけ素敵な未来につながるピンポンダッシュがあったとしたら…私、うれしい…」



「…エプロン姿の篠崎が見たくて、ピンポンダッシュを繰り返してた。ノートを渡しに行ったあの時、七年前と変わらない、今だに壊れかけたあのインターホンの音を聞いた時、急に面として渡す勇気が無くなっていた…」
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