恋はピンポンダッシュ!
謎の少年
「きゃあっ!」
いきなり校門の陰から誰かが現れたので、夏季と圭織はひどく驚き飛び退いた。
突如、二人の前に現れたのは、自分達と、丁度年齢が同じぐらいの、肩まで髪のかかった少年だった。その少年も学校帰りなのであろうか、制服姿であったが、夏季の通うこの千歳高校の物とは違っていた。そしてその少年は、じっと夏季の方を見つめていた。
しばらくの間、夏季とその少年は、見つめあったまま無言であったが、その沈黙を破るかの様に、夏季はその少年に話しかけた。
「…あなた、私に何か用?」
しかし、その少年は何も言葉を発さない。そこで夏季は、思い切って少年の方へ歩み寄っていった。そして少年の目の前で止まると、再びその少年に話しかけた。
「あなた、一体誰?私に何か用?」
夏季は少し首をかしげながら少年を見つめる。
すると、少年は急に顔を真っ赤にして、
「よ、用なんてねえよ!」
と夏季に言うと、くるりと後ろを向いて夏季の前から走り去っていった。
< 5 / 29 >

この作品をシェア

pagetop