恋はピンポンダッシュ!
追っかけて来る夏季の反応に加えて、「ピィ~ン…ポポ~ン」という、壊れかけのインターホンの音が、近所の悪ガキ達には非常に受けがよかったのだ。ちなみに夏季は、走るのが早い方では無かったので、一度もその悪ガキ達をつかまえた事は無かった。
そういうわけで、できるだけ先手を取ろうと、夏季は自宅のインターホンの音に過剰反応してダッシュしてしまうわけだが、それと同時に、たとえ今、目の前に誰もいないとしても、家の外を確かめる事を怠りはしなかった。
夏季は、玄関から外に出て、周囲を見渡す。…誰も見当たらない。夕焼け空によって、明日も快晴!と言うぐらいの情報しか得られる物はなかった。しかたなく家に引き返そうとしたその時、夏季の家のすぐ側にある電柱の陰に、誰かがいる事に気付いた。
「誰?そこにいるのは!」
その声に反応した人影は、ぱっと電柱の陰から躍り出ると、夏季の方も見ずに一目散に逃げ出した。
「まっ、待ちなさい!」
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