ト リ コ
「オムライス」
「え?」
「オムライスが食べたい」
なぜかとっさに出た言葉だった。
べつにオムライスが好きなわけでもないし、最近食べた記憶もないけれど、なぜかオムライスを頼みたくてしょうがなくなった。
「わかった。冷蔵庫失礼するね」
「えっ?」
出前かなんかでよかったのに……。
奥原さんはざっと冷蔵庫を見ると、よし、と呟く。
「台所使うよ?」
「料理できんの?」
「まあ、人並みにね」
へえ。
「フライパンと……油ってどこか分かる?」
「多分、その二段目の引き出し」
「二段目……あった。じゃあ二十分ぐらいかかるから、宿題でもしながら待ってて」
料理をする男の人の背中はなんだかかっこよかった。