白町黒町竹帽子

「それじゃあ、学生さんは、学生だから勉強してるのか？」

「そうだとも。」

　つくづく思うが、こいつは妙な猫だ。

　帰り際に竹丸は「明日も来いよ、学生さん。」と言って店の方へ戻って行った。

　命の恩人に向かって命令形で話すなんて、恩知らずな猫もいるものだが、どうしてか俺は竹丸を憎めなかった。

　その日は学生管理局の図書部屋で本を数冊借りて、寮に帰って読んだ。

　誰もいないので、夜は特に静かだった。読書は捗って、一晩で１冊を読み終えてしまった。戦争関係の古い書物で、いくぶん暗い話だったが、竹丸との時間よりも随分有意義だと思えた。

　水を飲もうと１階の厨へ行くと、蛍光灯の下に有象無象の虫たちが集っており、それを狙う数匹の矢守たちが虫たちを四方八方から囲んでいた。

　この灯りを消せば、最初に動き出した虫が彼らの餌になる。それだけは止めておこうと水を飲むだけで、そのまま床に就いた。