白町黒町竹帽子

　その夜、実に面白い夢を見たが、朝起きてもそれを聞いてくれる「人」はいなかった。

　土曜は寮長さんも寮母さんも出払っており、朝食は自分で拵えなくてはならない。なので、仕方なく、また目抜き通りの方へ出かけた。

　珈琲屋でパンと卵を焼いてもらい、遅めの朝食を済ませた。本当は米を頂きたかったが、この時期はどこも米を切らしているし、餅屋のおこわには飽きていた。

　大学も開いておらず、何もすることは無い。ならばまた図書部屋に行って本を借りるのも良いが、またあの道を通らなければならない。

　行くのは一向に構わないが、「また来たか。」と竹丸に言われると、なんだか俺があいつの言うことを聞いて、ノコノコとやって来たと思われては癪だった。

　北の方から回って行けば良いが、向こうは桜林を通って行かなければならない。

　どうも俺も八方塞がりのようだ。