白町黒町竹帽子

 実に感に障る猫だ、と思った。人が気にしていることをずけずけと。

 最初の頃は、まるで借りてきた猫の様に可愛い奴にも思えたが。まあ、まさに猫をかぶっていたのだろう。

「まあ待て。学生さんに良い私塾を教えてやろう。

「良い私塾だと?」

「ああそうさ。町外れの、ほれ、私が水遊びをしていた川があるだろ。」

 水遊びじゃなくて溺れてたんだろ、と言おうとしたが止めた。

 猫の戯言とは言え、その私塾は少し気になったからだ。

「その川沿いに上流の方へ少しばかり歩くと、橋が架かっておるのが見える。通行料は高いが、その橋を渡れば、小さな町に着くのだ。そこのまた町外れにその私塾があるのさ。」

 竹丸は黄色く澄んだ瞳をこちらに向けていた。

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