フランシーヌ
「核?」

ジョーは、首をかしげて思案した。

「熱線の影を捜してみますので、カメラ、動かしてもらえますか?」

核爆弾が発する強烈な熱線は、壁や道路などに物の影を日光写真のように焼き付ける。

軍務総長は、回線を繋いでいるオペレータに部屋から指示を出した。

「口頭で指示してくれたまえ」

「じゃあ、もう少し引いて、そこから円を描くように範囲を広げていって下さい」

モニターの映像がワイドになっていく。

「そのへんから、ゆっくり…え? ここって…」

カメラが引くと、ヨーロッパの古い街並みが見て取れた。

覚えのある歴史的建造物が見える。トレビの泉、コロッセオ…。

さきほどの殺戮が行われていたのは、ローマ市街だったらしい。
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