フランシーヌ
重大な事実を突きつけられたにも関わらず、軍務総長は事務的にジョーをねぎらう。

「それから…。爆心は、サン・ピエトロ寺院。ヴァチカンだと思います」

「な……に?」

ジョーが発見した三つの熱線の影の、光源に向かって伸ばした直線が交わる点が爆心地、グラウンド・ゼロである。

世界最小の独立国ヴァチカン市国は、わずか○・四四平方キロメートルの面積しかない小国だが、ローマ・カトリックの総本山として世界最大の影響力を持っている。

もし、ここが核攻撃で破壊されたら、攻撃国はどこの国からでも報復攻撃を受ける可能性があるだろう。

まさに、世界を葬り去るシナリオだった。

スッとジョーは立ち上がり、執務室のドアに向かった。

さすがに、少し疲れていた。

「石動(いするぎ)くん」

「はい」
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