流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
幸姫の反応に、行き場をなくした幸村の手は、むなしく宙をかいた。

辛そうな、切なそうなその表情に、幸村は、なにも言う事が出来なかった。

「幸村」

静寂を破ったのは、信玄だった。

「幸姫」

呼ばれてそっと、顔を向ける。
優しい顔。
大きくて、暖かな掌が、幸姫の頭をそっと撫でた。

「ちゃんと、伝えたいことは口にしなくては伝わらぬ」

言われている言葉の意味が、分からないわけではなかった。
だけど、それがどうしても難しくて、うまく身体が言う事を聞いてくれなかった。

「怖がることはない」

そう言って、信玄は幸姫の身体を持ち上げると、そっと、幸村の前におろした。

「幸村」

「はっ」

頭を下げる幸村に、信玄は少しだけ、小さなため息をつくと、小さく一言呟き、その場を去っていった。

あまりにも小さな声で、幸姫には何を言ったのか聞き取れなかった。


だが。


その言葉を聞いた幸村の表情は、一瞬にして固まっていった。
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