流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜

おとうさん

信玄は佐助を連れて、その場を離れた。
その場に残された、幸姫と幸村は、何を話せばいいのか分からないといった風に、お互い、俯いたり、顔を見てみたりして、ただ、時間だけが過ぎていった。

「…すまなかった」

幸村が深々と頭を下げた。

「本当は、幸姫が娘だと聞いたときから。俺は、父親であることを名乗り出たかった」

幸村の言葉を、幸姫はじっと聞いていた。

「だが、ずっと側に居てやれない。いつか別れが来ると分かっていて、父親であると名乗り出るのは…幸姫に、辛い思いをさせるのではないかと」

ぎりっとこぶしを握る幸村。
幸姫は、思い切って聞いてみた。

「どうしてゆきむらはいっしょにいられないの?」

「え?」

「みんな…みっちゃんやかおるちゃん。みんな、ぱぱもままもいっしょにいるのに。どうしてこうきは、いっしょにいられないの?」

幸村の表情が曇る。

「こうきもいっしょにいたいんだもん。れいちゃんと、ゆきむらと、いっしょにいたい」

希望と願望と、そして、切望。

望んでいたのはいつもひとつだけだった。



パパとママと、仲良く暮らすこと。
一緒に、楽しく暮らすこと。


そんな些細なことだけど。
幸姫にとっては、とっても大事な、夢だった。

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