流れ星に願いを 〜戦国遊戯２〜

3人でマンションを出る。幸姫はいつものように玲子と手をつないだ。そのとき、ふと幸村の方を見ると、幸村と目が合った。少し首を傾げる幸村に、幸姫は手をすっと差し出した。幸村は照れくさそうな顔で、幸姫の手を握った。

「おさんぽ、おさんぽ！」

幸姫はにっこりと笑って歩き出した。玲子と幸村。2人と手をつないで、とても幸せそうに歩き出した。玲子はそんな幸姫を見て少しだけ涙ぐんだ。幸村は照れくさそうに頭をかいていた。

しばらく歩いて行って、例の穴の前まで来た。
来たはずだった。

「…穴がなくなっている」

幸村が呟いた。玲子もきょろきょろとあたりを見回していた。
幸村はすっとその場にしゃがんで、幸姫の方を見た。

「なぁ、幸姫。ここに穴があったよな？」

言われて幸姫はこくんと頷いた。

「うーん。あったとおもう」

幸村は少し焦った表情だった。玲子も複雑そうな顔をしている。2人で何かを話していたが、幸姫には何を話しているのかよくわからなかった。

「ねー、おなかすいたよー？」

2人がしきりに何かを話しているところに、幸姫は口を挟んだ。いつもなら晩御飯を食べている時間だ。皆で散歩に出たのは確かに楽しいが、幸姫のおなかがきゅるきゅると可愛い音を立てて鳴いていて、幸姫はその場にしゃがみこんだ。

幸姫のその姿をみて、少し困ったような表情を2人は浮かべた。

「穴はなくなっちゃってるし、とりあえずいったん家に帰ってご飯にしてもいいかな？幸姫がおなかすかせちゃってるし」

玲子の言葉に幸村は頷いた。

「確かに、今ここで原因をああだこうだと言っていても仕方がないな」

困惑した表情の幸村に、玲子がごめんなさいと謝ると、幸村はいや、と首をふった。

「幸姫、帰ろうか」

幸村に言われて、幸姫はうん！と大きく頷いた。すると、幸姫の前で、幸村がしゃがみこんだ。幸姫は大喜びで、幸村の背中に飛び乗った。

「こら、幸姫！」

玲子が怒ると、幸村は笑って首をふった。

「幸姫、楽しいか？」

「うん！」

「そうか、ならばよい」

幸村は嬉しそうに、幸姫をおんぶして歩き出した。玲子は、少し困ったような、でも嬉しそうな表情で、2人を見ると、そっと幸村の腕をつかんで歩き出した。