流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
エレベーターが1Fに到着して、3人は降りてマンションを出る。出てすぐのところに、タクシーが1台止まっていた。

「青柳様でしょうか?」

運転手のおじさんが、幸村に向かって聞いてくる。幸村が首をかしげていると、玲子がそうですと答えた。

「お待ちしてました。どうぞ、お乗りください」

扉を開けてくれたので、まず、玲子が幸村を車に乗るように促した。不思議そうな表情で、幸村が車に乗ると、それに続いて幸姫が車に乗り込み、玲子が最後に乗った。

「閉めますよー」

運転手に言われて、玲子は短く、はい、と答えた。すると、ドアがひとりでにばたんとしまる。

「い、今のは!?」

幸村が目を点にしていると、玲子が必死で笑いをこらえながら答えた。

「忍者だよ」

「なに!?まったく気配を感じなかったぞ!?なかなかの手錬だな…」

感心したように言う幸村に、玲子は顔をそむけて1人、笑いをかみ殺しながらプルプルと方を震わせていた。

「お客さん、東京駅まででいいですか?」

「あ、はい。お願いします」

運転手が不思議そうな顔をしながら行き先を確認してきたので、玲子はそれに頷いて答えた。

しばらくの間、幸姫は幸村のひざの上に乗って、一緒に窓の外の景色を眺めていた。何が楽しいのかと聞かれると、回答に困ってしまうのだが、なんだか車から見える外の景色は、くるくると変わっていって、見ていて飽きない。

「今日はご家族みんなでお出かけですか?」

運転手が、ほほえましそうに幸姫たちをバックミラーで見ながら聞いてきた。

「きょうはねーお出かけするの」

楽しそうに答える幸姫に運転手も笑って、よかったね、と答えた。幸村が頭を優しく撫でてきた。幸姫は嬉しそうに、幸村にもたれかかった。
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