リラ冷えの頃に
リラ冷えの頃に
澄んだ川面に自分の姿を映し、リラは髪を整える。

走ってここまでやってきたにも関わらず、リラの髪は殆ど乱れることなく、綺麗に落ち着いていた。

それでも懸命に髪に手櫛を通すリラの姿は、とても微笑ましいものだった。

「リラ」

自分の名前を呼ばれ、パッと顔を上げるリラ。

その顔には満面の笑みを浮かべ、頬は少し赤らんでいる。

「アドニス!!」

嬉しそうに声を上げると共にアドニスに駆け寄ると、リラはアドニスの細い腰に抱きついた。

「ねえ、今日はどこに連れて行ってくれるの?」

上目遣いで言うリラにアドニスは目を細め

そしてリラの薄紫の髪を優しく撫でた。



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