リラ冷えの頃に
「…リラの事を……好きだと言ってくれる人がいるんだ」

その言葉の意味する事は、まだ少女であるリラにも理解出来る内容だった。

アドニスの言葉に、リラは何も返さない。

まだあどけなさの残る少女は、この言葉に何を感じたのだろう。

ましてや自分の想い人から告げられたとなれば…。

傷つき、泣き喚いても可笑しくないような状況だが、リラは顔色さえ変えることなく、憂いを孕んだ眼差しでアドニスの瞳をじっと見つめていた。

リラ自身も全く気付かなかった訳ではない。

この辺りではあまり見かけない様な格好をした人たちが、アドニスの両親の許を訪ねたり、アドニスの両親が自分に対して申し訳なさそうな顔をする。

その原因を少しずつ理解していくのと同じ様に、徐々にではあったが、リラの心にも変化があった。




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