リラ冷えの頃に
“四季”と言う物は頭では分かっていたが、体感してみてこれが“四季”なんだと実感する。

穏やかな季節しかなかったあの世界。

晴れの日があって、雨の日がある。

暑い日があって、寒い日がある。

今更だけど、移ろいのある世界とは、なんて素晴らしいのだろう。



早春の風が優しく頬を撫でていく。

花壇の前にしゃがみ込んだ私は、アドニスの笑顔を思い出していた。

心残りに思うのは、最後にアドニスの笑顔を見れなかった事。

リラの瞳に最後に映ったのは、アドニスの悲しげな表情だったから。


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