リラ冷えの頃に
ねえ、アドニス…

ここは酷い世界なんかじゃないよ。

花壇の白いアネモネを見ながらアドニスの笑顔を思い出そうとしたが、その姿は私の頭には、もうはっきりとは現れてくれなかった。


私は立ち上がりあの湖と同じ色の空を見上げる。

そして早春の風に背中を押されるように、前に一歩踏み出した。





………おわり………
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