リラ冷えの頃に
でもリラの困らせたくないと言う思いとは裏腹に、アドニスの口から出たのは困った様な気落ちした声だった。

「リラ…ごめん……」

ここで子供の様に我侭を言えれば、締め付けられる胸が少しはラクになるのだろうか。

しかしリラは変に大人びていて、どうも素直になる事が出来ない。

強がり、そして平気な振りをする。

会いたい、寂しいと。

強く言えば、優しいアドニスの事だから、自分の側に居てくれる。

それは分かっているが、そこまでアドニスの足枷になりたくなかった。

今までも自分の為に、アドニスが犠牲にしてきた物が、沢山あるのをリラは知っていたから。




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