リラ冷えの頃に
「こんなに綺麗なのに…」

アドニスの言葉に素直に従うことなく、リラは一層身を乗り出そうとする。

湖の水は澄んでいて、その湖底までも見て取る事が出来る。

しかしそこには生物は全く存在せず、ただ青い湖の水と時折映る雲の姿、そしてその影だけが存在する。

覗き込んだ者の姿を映さないその湖は異質な物で、そこに近づく者は少なかった。

「落ちたらもう戻ってこられないぞ」

「…うん」

この湖に子供だけで来る事は許されていなかった。

もし大人が一緒だったとしても、十分に気をつけなければならない。

湖に落ちてしまえば、助ける事が出来ないからだ。

「ねえ…下界ってどんな所なの?」

リラは湖の際に膝を立てて座り、アドニスに問いかける。



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