月の雫 -君と歩む彼方への道-
「そりゃ、そうだろ。


この研修所にいる以上、階級が上がるのがうれしいのは当たり前だろ」



そう言い訳がましく言う自分の声が、だんだん自信なさげになっていく。



――何か引っかかる。


オレは、何が引っかかってるんだ?



「それだからおまえはダメなんだ」


シルヴァイラの冷たい声。

ダメとは何だ。


「こないだ自分で言ってたじゃないか。

起こる現象と心が感じることは別だって。

その舌の根も乾かないうちに、”階級が上がるのがうれしいのは当たり前”って、矛盾してると思わないのか?」


いつものかすれた声で淡々と言われて。
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