月の雫 -君と歩む彼方への道-
「戦闘心をなくして、穏やかで平和な心にできないかと思ったんだ」

「……天才だなおまえ」

「うまくいくかどうか、わからなかった」


オレの賛辞にも顔色ひとつ変えず、そっけなく返す。


「でも不思議だな。


あいつの心を覗いたら、激しい恐怖でいっぱいだったんだ」

「恐怖?」

「ああ。

自分に危害を与えるんじゃないかっていう恐怖があるから、目の前のものと戦わずにいられない。

その恐怖をとりのぞいてみたら、あっさり戦闘心がなくなった。


あんな怪物でも、きっと本当は戦いたくないんだ」


「……」


どこか悲しげにそう話すシルヴァイラに、オレは何だかちょっぴり心を打たれた。
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