月の雫 -君と歩む彼方への道-
ていうか、”離せ”って、何やってたんだよ……。


オレはついつい余計な妄想に浸った。


「言われなくても離してやる。

こんな細い腕をして――いつでもぽきりと折ってやれそうだな」

「……」

「それにしても、本当に美しいな」


うっとりと、歌うような声。


隠れた低木の密集した葉の隙間からそっと覗くと。

レイジュラがシルヴァイラの片腕をしっかり握って引き寄せ、もう片方の手で細いあごを持ち上げていた。


(……)


オレは今や、息をすることすら忘れて、二人のまるで絵のような姿に見入ってた。

くやしいけど、まるで絵をそのまま切り取ったみたいな光景だ。


オレは、なぜかちょっとグッサリきてた。
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